インディゾーンさんの『The Foundry’s Mari Open House』というセミナーに参加してきました。
開発者のJack Greasley氏のデモンストレーションを見た後、個人的に質問することができました。
Jack Greasley氏は下の動画でもデモンストレーションされています。
Mari 3D Texture Painting by The Foundry
デモを見ながら取ったメモなので、間違えがあったり、本来の機能でないものもあると思いますが、ご了承ください。
【機能について】
●基本的にはビューポートの任意の角度からプロジェクションマッピングでペイント・修正し、ビューを動かすとそれが適応される。ZBrushのProjectionMasterに似ているが、よりシームレスで、他の機能と複合的に扱える。
●ある角度からのプロジェクションを確定するまでは、ストロークしたものや画像に対して、AEのメッシュワープやパペットピンのような機能が使える。メッシュワープはグリッド数をインタラクティブに変更でき、非破壊。
●Photoshopのコピースタンプツールのような機能を、投げなわツールの範囲指定で行える。
●ディフューズ、スペキュラ、バンプなど、シェーダのチャンネルごとに表示・修正できる。
●各チャンネルのレイヤー毎またはレイヤーを超えて、トーンカーブなどのカラーマッピングが使える。
●複数のオブジェクト間をわたってペイントできる。例えば、読み込んできたOBJが異なりTEXやUVの違うモデルを、同時にワンストロークでペイントできる。
●プロジェクションマスキング(オブジェクトのエッジマスク・RGB別のマスク・キャビティマスク・オクルージョンマスク)が使える。
●3DとUVビューが双方リアルタイムに更新されプレビューできる。
●ポリゴン単位での非表示・ペイントロックができる。
●ペイント時は常に32ビットでペイントされ、書きだす際は通常の8ビット画像から、32ビット画像まで対応している。
●アニメーションモデルはOBJのシーケンスエクスポートで読み込める。
●UIを自由にカスタマイズでき、すべての機能にキーボードショートカットを割り当てられる。
●現在のビューポートをワンクリックで32Kまでの画像としてフォトショップへ移し、修正後ワンクリックで戻したものを適用できる。
●GLSLでゲームのカスタムシェーダをMari内で再現できる。
●ライト、オクルージョンをベイクできる。
●Mariの強力なカラーマネージメント・カラープロファイルによって、最終出力の色を確認しながらペイントできる。
●クイックターンテーブルをレンダリングすることができる。
●GPUレンダリングで1万ピクセルまでレンダリングでき、それもターンテーブルできる。
●ブラシはBMPやPNGで作ることができ、Photoshopのようにカスタマイズできる。ブラシストロークのブレンディングはPhotoshopと一緒。
●ブラシに32ビット画像を適用できるため、ディスプレイス画像が描ける。ただ、現時点ではディスプレイスは再現できず、ハイメッシュをインポートしてくるしか方法がない。
●よく使う機能をシェルフに登録できる。プロジェクト単位でシェルフを保存できる。
●マルチパッチ(同一モデルで複数のUVを持つこと。UVチャンネルではなく、0-1以上の領域を使うこと。)にシームレスに対応。UV間で指先・ぼかしツールやその他の機能を使うときに途切れたりしない。
●4Gを超えるようなプロジェクトデータを扱う場合でも、ファイルのオープン・クローズが20秒程度ですむ。
●マニュアルは非常に詳細で、大体のアーティストが2、3日で覚えられる。
【パフォーマンス】
●マルチモニタ対応。
●マルチコア・マルチスレッド対応。
●グラフィックカードのメモリと物理メモリの取り回しが自動で最適化され、通常それらで扱える以上のポリゴン数を表示できる。
●基本的にはキャッシュされるハードディスクの早さとグラフィックカードの性能によりパフォーマンスが決まる。
●デモンストレーション時の環境はDELLのノートワークステーションで、8コアCPU、8Gメモリ、QuadroFX3800m、普通のHDDという性能だったが、140万ポリゴン4K10枚以上のモデルがさくさく動いていた。
●推奨はQuadroシリーズになっているが、GeForceのGTX450と480にも正式対応している。480の場合、デモ時の4倍程度のパフォーマンスが見込める。
●作業ディスクをSSDにするとさらに速くなる。
【今後のバージョンアップ】
●Windows版はv1.1になり、1か月半から2か月後ぐらいにアナウンスされる。今はαテスト期。
●次期バージョンではPythonへの対応や、C++のSDKリリースにより、パイプラインへの組み込みが強化できる。
●アニメーションモデルのインポートに関して、今後のバージョンアップでやAlembicやMDDに対応することを検討してる。
●次期バージョンでアニメーションされたカメラをFBX形式で読み込める。
●今後グラフィックカードの会社と協力し、ディスプレイスメントを表現できるようにする。
●ディズニーとの技術提携により、UVに依存しないPTex(別参照)(Youtube)を始めとしたディズニーの『Paint3D』という技術をMariに導入していく予定。
【個人的な質問による回答】
●ILM、DigitalDomain、Pixar、Disney、DoubleNegative、FlameStore、MPC、など主要な大手はほとんど導入済みらしいです。Foundry的にはパイプラインを確立させているのは今のところXSIとModoだけですが、それらの大手は独自でレンダーマンシェーダなどに組み込んでいるとのことです。
●ILMの有名なテクスチャペイント専門ツール『ViewPaint』は、おもにプロジェクションマッピングでの計算によるもので、内部的には何百ものプロジェクションがなされている状態らしく、Mariはプロジェクション以外の機能を組み合わせられるという利点から、差別化を図っていきたい考えだそうです。
●アバターの大気圏突入シーンの飛行機をペイントしたときの環境は、光ファイバーで構築されたRaid5のハードディスクでキャッシングして、何十ものマルチパッチ毎に30チャンネルを持ちそれぞれが30レイヤー以上を内包していて、それらをワンクリックで3Dソフトのシェーダに組み込み直すツールがあるみたいです。Mariだとそれらを全体で調整したいときにはスライダを動かすだけでよいのですが、それをPhotoShopでやろうとすると50以上のファイルを1つずつ調整しなければならないみたいです。そんなモデルをレンダリングするのは4万5千台のレンダーファームで、さすがにFoundry社の人も「驚きだねw」って言ってました。